特集 超高齢社会―大都市の高齢者支援の課題
大都市における高齢者の在宅ケア―現状と課題
黒田 研二
1
1関西大学人間健康学部
pp.612-616
発行日 2014年9月15日
Published Date 2014/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401103092
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はじめに
2010年から2040年まで30年間の65歳以上人口の増加率の推計によると,首都圏など大都市部でその増加率は高い(国立社会保障・人口問題研究所).大都市は単身世帯が多いことも特徴である.大阪市では65歳以上の人のいる世帯のうち単身世帯は全国21.8%に比し41.1%をも占めている〔平成22(2010)年国勢調査〕.医療政策上,病院病床数を増加させていくことは選択肢に上がっていない.むしろ療養病床数を削減していくことが目指されている.こうした状況の下で,大都市の高齢者の医療と介護をいかに確保していくかが課題となっている.
2025年以降,65歳以上人口の中でも後期高齢者の割合が半数以上を占めるようになり,高齢者の大量死時代が到来する.2011年,年間の死亡者は125万人であったが,2030年には年間161万人の死亡が推計されており,病床数が抑制されていく中で,高齢者の看取りをどこで行うかということも課題となってくる.大都市では地域における互助の力も衰退傾向にある.在宅療養支援診療所・病院等を,診療科目の専門分化,職住分離が進む中,今後どこまで増加させていくことができるかも課題である.
こうした現状を踏まえて,本稿では,大都市での在宅ケアについて筆者の大阪での経験も交えて総論的に述べていきたい.
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