特集 ビル・地下街—新しいコミュニティー
都市におけるビル・地下街の環境衛生の課題
三浦 豊彦
1
1労働科学研究所研究部
pp.506-511
発行日 1968年12月15日
Published Date 1968/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203782
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わたしがビルの環境に関心をもつようになったのは昭和15(1940)年のことで,はじめて,ビルのなかにあるオフィスの換気問題を中心にした調査をやってからである。そのビルは現在も日比谷の交叉点の日活ホテルの前に残っている。このビルのなかのある工業会社のオフィスで,あの交叉点を通るたびにその当時のことを思い出す。温熱条件はもちろん,時間を追って炭酸ガス濃度が測定されたし,粉塵もダストカウンターやインピンジャーで時間を追って測定された。このオフィスは当時かなりおそくまで仕事をしていたので,採取した資料を研究室までもって帰り,処理すると,23時ごろになったような記憶がある。建築衛生の面では,当時の同僚で,今は大阪市大の石堂正三郎教授が協力した。この調査結果は第何回かの連合衛生学会で報告したし,論文として"労働科学"誌にものっている。当時はこうした調査も珍しかったのである。こんなことを書いたのも,ビルの環境について,当時やっとほんの少し関心がもたれはじめたころで,全体的にみれば,オフィスビルの環境を問題にすること自身が,おかしいくらいに考えられていたものである。
生活のなかにビルがこんなに侵入してきたのは,ここ10数年来のものではないかと思う。
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