特集 地域の中の個別援助
ケースの人生を尊重する援助とは—自由気ままに生きたFさんと関わって
牛尾 裕子
1
1兵庫県赤穂保健所
pp.872-876
発行日 1994年11月10日
Published Date 1994/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901023
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まだ十分エンジンのかかり切らない月曜の朝,その電話はかかってきた。「もしもし,Fの妹のKです。実は,Fは3月1日に亡くなりまして,葬式も昨日すませたのですが,荷物を整理しておりますと財布に保健婦さんの名刺が入ってまして,お知らせしなければと思い出してお電話しました」。Fさんは浴槽に浸ったまま亡くなっていて,死後3日目に発見されたようだった。
Fさんは,私が保健婦1年目で初めて出会った極めて援助困難なケースだった。このケースへの関わりの経過をレポートにまとめたところ,平成5年12月14,15日の2日間にわたる県の保健婦活動研修において,本ケースが題材としてとりあげられて,「事例研究の進め方」についての研修が行われた。2日間の研修を通して,自分自身のケースに対する視点を考え直すことができ,新たな気持ちでFさんへの訪問を開始しようと思うことができた。ところが,その後,忙しさにかまけているうちに数か月が過ぎ,今月こそは訪問しようと考えていた矢先の不幸な知らせであった。
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