特集 保健医療情報のシステム化とその背景
保健医療情報のシステム化を行って—開発に従事した医師の立場から
松浦 覺
1
1兵庫県立成人病センター
pp.37-43
発行日 1994年1月10日
Published Date 1994/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900857
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わが国の医療制度の基本的な特徴としては,自由診療つまり受診者は医療機関を自己の意志で自由に選択できること,および保険制度が完備していることなどが挙げられる。したがって,いわゆる医療情報はとき,ところを一にして,あるいは違えて多発している。これらの情報はそれぞれの医療機関で管理し保存されているが,医療機関相互間の情報管理体制は組織化されていないことが多いので,特定の個人について医療情報を時系列的に整理して管理するといったあり方はほとんど認められない。
また,最近,老健法に基づく各種健診が普及しているほか,成人病に関する職域健診,人間ドックなどさまざまな健診がなされているが,そこに発生した情報もまた,それぞれの機関に各個に管理,保存されているのみで,個人について時系列的に管理されてはいないし,まして医療情報とともに総合的に管理し,健康管理あるいは効率的な医療の進め方に役立てるというあり方は考えられていない。乳幼児,学童についても,定期的に検診,健康相談がなされているものの,せっかく生じた情報の管理に問題があるため,医療の面から見ても,また保健,健康管理の立場からも情報が死蔵され有効に利用されていないようである。
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