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はじめに
1994(平成6)年の地域保健法の施行後,市・特別区の保健所は設置数,組織体制,業務内容などの面で大きく変貌してきた.都道府県,政令指定都市,特別区の保健所は同法の施行から統合が進み,大幅に減少している,一方,中核市保健所は,中核市制度の発足と,その設置基準の緩和による中核市の増加に伴い,増加している.
市・特別区の保健所は,自治体ごとに組織は多様であるが,①保健所固有の感染症業務,②食品,医事薬事などの生活衛生関連業務,③市町村業務である保健サービスの母子保健や予防接種,特定保健指導,高齢者保健対策,健康づくり対策などを同一の自治体内で実施できることと,福祉や教育などの市の部局と連携して上記への対策ができることが大きな強みとなっている.広域的ないし重大な感染症や食中毒などの健康危機の発生時には,国や県との綿密な連携が必要である.
保健所の全体数は,ピーク時の1991(平成3)年度の852カ所から2017(平成29)年度の418カ所となり,ほぼ半減した(表1)1).特に県型保健所の多くが二次医療圏ごとに1カ所に集約され,政令指定都市および特別区の保健所も統合によって大きく減少している.
1989(平成元)年当時,10の政令指定都市では行政区に1つずつ保健所があったが,その後,福岡市と名古屋市を除いて1市・1保健所となった.1997(平成9)年度に札幌市で9→1,広島市で8→1,北九州市で7→1となり,1998(平成10)年度には神戸市で9→1に,2000(平成12)年度には大阪市で24→1カ所に順次統合された.
人口が360万人を超える横浜市も,2007(平成19)年度に,それまで18あった保健所が1カ所となった.2010(平成22)年度には京都市で11→1に,2015(平成27)年度には仙台市で5→1に,2016(平成28)年度には川崎市で7→1カ所に統合された.1992(平成4)年度に政令指定都市に移行した千葉市を皮切りにして政令指定都市に移行した市は1市・1保健所体制である.
現在,政令指定都市で複数の保健所を設置しているのは,福岡市の7カ所,名古屋市の16カ所である.東京都の特別区は,地域保健法の施行前から荒川区と渋谷区が1カ所であったのを除き,各特別区に戦前の行政区ごとに2〜4カ所の保健所があったが,1997(平成9)〜2002(同14)年度に順次,1区・1保健所に集約され,元の保健所は保健センター(福祉部門や子育て部門との統合が行われるなど,機能がさまざまで,名称も保健相談所,健康福祉センター,保健福祉センター,健康サポートセンターなどがある)となった.
一方,中核市制度が1995(平成7)年に発足し,また,その法定人口が30万以上から20万人以上とされるなど,その設置基準が緩和されたため,保健所の設置市は増加してきた.その他の政令市の設置保健所は中核市への移行で減少している.
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