特集 児童虐待—危うい子育て環境そのサポート
保健所からのアプローチ
宮本 ふみ
1
,
徳永 雅子
2
1東京都福生保健所
2世田谷区世田谷保健所
pp.780-787
発行日 1993年10月10日
Published Date 1993/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900763
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はじめに
保健所は地域の住民の多様な健康問題に対応するその窓口の広さゆえに,虐待問題およびその周辺の問題に関わっていく機会を多く持つと考えられる。しかし,援助をする側が,虐待についての深い認識と理解を持っていないと,通常の相談の底に隠されたサインを見逃し,予防や早期介入のための援助を提供する機会を失うことになる。
保健所が何度か同じ親子に出会う機会を持ち,親も育児相談や健診の場で「育児不安」や「子どもの育てにくさ」について訴えているのに,保健婦がその訴えの深刻さを十分受け止められず,通常の育児相談として対処しそのままにしておいた。身近な相談相手のいない親子は地域で孤立したまま追い詰められていき,ついに虐待問題に至った。――そんな例に私たちが出会うことは,決して稀ではない。地域の親子が最初に出会う相談機関としての保健所の対応は,育児困難に直面している親子のその後の推移に少なからず影響を与えていく。
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