特集 若者にはびこる性感染症
思春期の若者へのセクシャル・ヘルス支援に向けた保健所からのアプローチ—地域モデルプログラムの試み
内野 英幸
1,2
1前長野県大町保健所
2現長野県木曽保健所
pp.331-336
発行日 2002年5月15日
Published Date 2002/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902726
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わが国の高校生は男女ともに卒業までに4〜5割と半数近くが性交経験者と推測される1,2).私たちの2000年の調査では,性交経験のある高校生で直近の性交時にコンドームを使用しなかった者が4割,過去6ヵ月間の性交で一度もコンドームを使用しなかった者が5人に1人,女子高校生の妊娠や人工妊娠中絶の経験者の割合は全体の4.6%,セックス経験者中12%となっていた2).
事実,わが国の20歳未満の女子人口千に対する人工妊娠中絶率は,1996年に7.0と増加に転じ,毎年1ポイントの上昇があり,1999年には1.5ポイント上昇とさらに加速,2000年の人工妊娠中絶率は12.2と,5年前の2倍に急上昇している3).加えて若者の性行動に伴うリスクとして,10代女性の性器クラミジア感染症の流行が深刻な問題として浮上している.10代妊婦の性器クラミジア感染率が約2割との報告もある4).また,性器クラミジア感染症は女性で5人に4人が無症状であり,発見の遅れによって重篤な後遺症を招きかねない.ましてHIV感染症など治癒できない疾患に罹患すれば,生命を脅かすことになる.したがって,特に若い女性におけるセクシャル・ヘルス(性の健康)はわが国でも非常事態であり,思春期の望まない妊娠・性感染症予防のために緊急かつ具体的な効果の上がる方策を実践段階に移す必要があるのは明白である(図1).
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