特集 児童虐待—危うい子育て環境そのサポート
救急外来の現場からみた小児虐待
末吉 圭子
1
,
橋本 信男
2
1聖マリア病院小児科
2聖マリア病院ICU
pp.775-779
発行日 1993年10月10日
Published Date 1993/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900762
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はじめに
わが国でも被虐待児症候群(Battered Child Syndrome)は小児の救急医療疾患の1つとして問題となっている。子どもが養育者や保護者などから虐待を受け身体的に障害を生じる。1962年に米国のKempe Cら1)は,親や子どもの周囲にいる親族関係または親の代理になって養育している保護者らが,子どもの身体に何らかの方法で虐待を加え,その結果精神的,肉体的に損傷が生じたものを被虐待児症候群(Battered Child Syndrome)と定義して報告した。子どもの発育発達障害,未熟児,新生児期にいろいろなリスクファクターがあるもの,早期に母子分離(新生児期に病的疾患などで入院を要したもの),脳性麻痺や心疾患などの器質的疾患で手間がかかるもの,育児に対しての養育疲労などいろいろな因子が隠されている。
よって我が国にも虐待関係の子どもは多数いると考えられる。早期に発見し予防するためには,保健所活動,児童相談所などの福祉活動などとの協力が必要である。一般の外来医療において小児科でも発見し診断することは非常に難しい。したがって小児科以外の診療科においてはもっともっと困難だといえる。被虐待児症候群に対する各地域においての理解知識に差がありすぎることも問題の1つだと考えられる。
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