特集 小児医療者のための虐待の知識
小児外傷患者と虐待
福本 弘二
1
Koji Fukumoto
1
1静岡県立こども病院小児外科
pp.1174-1177
発行日 2024年11月25日
Published Date 2024/11/25
DOI https://doi.org/10.24479/ps.0000001009
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はじめに
虐待の判断はきわめて難しいが,見逃せば子どもの生命に危険が迫る。一方で,虐待を見逃さないことも同様に困難である1)。子どもの安全確保が最優先されるので,過剰診断は許されると考えてよい。傷害(事故外傷)との鑑別が明確でない場合でも,虐待を念頭において総合的医療対応が行われるべきであり,損傷のみでの判断は避けることを意識しておく必要がある。すなわち,傷害(事故外傷)の特徴と,虐待による損傷の特徴をしっかり把握しておく必要があり,身体的虐待による損傷の看過は絶対回避しなければならない2,3)。虐待を疑うポイントは,年齢相応の子どもらしさをなくしている子どもと親子の関係の存在・非自然的外傷痕や説明のつかない頭部外傷の症状・原因不明の発育障害・保護者の説明の曖昧さ・説明の変化・症状や所見に合わない説明・治療方針や予後に無関心など,きわめて多彩である4)。日本小児科学会の『子ども虐待診療の手引き』は2022年に大幅に改定され,改訂第3版では,身体的虐待による外傷や内蔵の損傷についても詳述されている5)。また,損傷の重症度については,虐待であっても偶発的なものであっても変わりはなく,日本外傷学会臓器損傷分類2008(表)6)に沿って判断する。本稿では,日本小児科学会の『子ども虐待診療の手引き』改訂第3版より身体的虐待による外傷と内蔵の損傷から抜粋・引用し,小児外傷患者と虐待についてまとめた。
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