特集 保健・福祉の新たな関係—統合・連携の課題
精神保健における保健と福祉の統合・連携の課題について
桑原 治雄
1
1滋賀県精神保健総合センター
pp.266-271
発行日 1993年4月10日
Published Date 1993/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900673
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はじめに
私は,これまで精神保健活動の対象者と言えば,精神に何らかの障害を受けているか,精神疾患と診断されている人々だと考えていた。それは誤りだそうだ。近頃,ある雑誌で,保健所は精神障害者から手を引き,健康者の心の健康の増進を行うべきだとの意見を読んで目から「うろこ」の落ちる思いがした。その識者は,精神障害者などは精神病院に任せて置けばよい,されば,保健所は精神保健に悩まないだろうと書いておられる。邪魔者は捨てろ!されば,やらないなどと批判されないだろうということだろうかと不審に思った。
また,別な識者から,現在の社会で問題となっている登校拒否や家庭内暴力や思春期の問題行動や職場の不適応などに注目せずに,精神分裂病ばかりに目を向けている現状は誤りである。現在の社会のニーズに応えていこうとするのが,保健所の精神保健活動の主旨ではないかとも聞いた。まことにもっともであり,今日の社会の生み出している精神的不健康の問題を見逃すわけにはゆかない。ところが,精神障害者などは医療に任せて,公衆衛生は健康者の心の健康の増進をやればよいと言われると,「はい,わかりました」とばかり言えなくなる。
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