連載 ホワイエだより・16
気になるTさん
飯田 公子
1
1稲毛ホワイエ
pp.564-565
発行日 1992年7月10日
Published Date 1992/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900528
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都会型の婦人
昨年の秋からホワイエに都会型の婦人が通所されるようになった。ホワイエのお年寄りでは初めてのタイプである。では,どこが都会的と感じるかというと,話し方,身体の動き,身だしなみなどシャキッとし,カラッとし,何よりも意志表示をはっきりするからだろうか。実年齢(75歳)よりずっと若く見え,軽やかで明るい性格は「ボケがある」ということをカモフラージュしてしまっている。発病して4年ぐらい経っているとのことだが,元々身体的には健康で細かいことにはこだわらないおおらかな性格だったのが,今でも人格を保っていられる所以かもしれない。
一般生活面では自立しているが,近い記憶の障害(記銘力)はかなりのもので,大げさに言えば,瞬きしたら前のことか消えてしまっている,というようなことが常にある。それでも「…そういうこともあるでしょうねー」とか「…なーんちゃってね」とか,会話のつじつまを上手に合わせるテクニックが度々使われ,ボランティアも「今のは本当のこと?」「処世術?」と判断に苦しむ場面に多々出会う。
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