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はじめに
WHOでは「2000年までに全ての人に健康」をめざして,「身体的,精神的,社会的に完全によい状態」を実現するための戦略として,1978年のアルマ・アタでのプライマリー・ヘルス・ケア宣言1,2)に続いて1986年オタワ憲章としてヘルスプロモーションが提唱された3)。そこでは,ヘルスプロモーションを「人々が,自らの健康をコントロールし,改善することができるようにするプロセス」であるとし,「個人が健康を増進する能力を備えること」と「個人を取り巻く環境を健康に資するように改善し,対処(cope)すること」の2点が大きな柱として示された。
また基本概念として,健康そのものが目的ではなく,健康は生活の資源であり,最終目的はウェルビイングであることや,そのような健康は,保健の分野のみでは実現できないことなどがあげられている。その基調は,健康教育と社会システム,いわゆる「しくみ」の構築といえるだろう。また,1991年,スウェーデンのサンドバールにおいて,健康に資するための環境への対処に焦点を当てたWHOの国際会議が開かれた。そこでは,社会的側面や政治経済的側面,身体的,精神的側面などを含めた暮らしを取り巻くすべての環境を,健康に資するものにしていくことの必要性や戦略などが提示された。社会的な側面では社会規範や習慣,政治的側面では政策決定への住民参加などが強調されている4)。
具体的な展開方法や重点とすべき課題は,国レベル,県レベル,保健所,市町村レベルによって異なることは当然考えられる。本稿では,現在わが国の保健所,市町村で実施されている具体的な保健活動の展開方法や考え方と対比させることで,ヘルスプロモーションを考えてみたい。
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