特集 母子保健活動の評価
母子保健活動の現状をどう評価していくとよいか
高野 陽
1
1国立公衆衛生院母性小児衛生部
pp.447-453
発行日 1989年6月10日
Published Date 1989/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207752
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はじめに
本誌の編集の方からこのテーマの原稿依頼を受けて,ふと,現在の保健婦さん達は,母子保健をどのように考えているのか,不安と期待が入り混った複雑な気持がよぎった。
母子保健事業は,他の対人保健事業に比して,何となく停滞気味であることは,だれの目にも明らかである。この停滞には,2つの意味があると思っている。すなわち,その1つは,事業の運用そのものが停滞せざるを得ない状況にある場合,その2つ目として,母子保健そのものに意欲をなくしてしまっている場合とがある。どちらも,保健事業の対象となっている「母と子」にとっては,必ずしも喜ばしいことでないには違いない。とくに,後者の原因による停滞であっては何をかいわんやである。その誘因は,乳児死亡率をはじめとする母子保健の指標となる「数字」が,あまりにも見事であるために,活動の必要性を感じない人がいたりする場合や,母子保健事業システムが整っており,その方向性が明確に示されているので,すでに敷かれたレールの上に乗ってしまっていれば,そのまま事業がすすんでいき,とくに,むずかしいことを考えなくても「自然に」事業が流れていく。このような理由による停滞は全くないとはいえない。
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