発言席
なぜ「在宅」ケアなのか
井上 勝也
1
1筑波大学
pp.355
発行日 1989年5月10日
Published Date 1989/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207735
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いま,老人の「在宅」ケアに関する議論が,あちこちでかまびすしい。欧米では,ホームや病院を中心とした施設ケアがあたり前であり,大げさにいえば,在宅ケアという概念はないほどであるのに,なぜわが国では「在宅」ケアなのであろうか。
この強い「在宅」ケア指向の背景には,当然のことながら,老人の強い家族指向がある。家族とともにいたい,病気になってもならなくても家族とともにありたい—このような家族指向は,最近減少しつつあるといっても,実際はまだまだ根強く老人と家族の側双方に残っている。わが国は,ひと口に6割同居(欧米では1割同居ですらない)といわれるが,それなども強い家族指向のあらわれといえよう。
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