本を読む
―菱沼從尹・香川靖雄・山口迪夫編著―「日本人はなぜ長生きするか—健やかな長寿社会を求めて」
松田 正己
1
,
大竹 登志子
2
1信州大学医学部
2東京都老人総合研究所看護学研究室
pp.250-251
発行日 1989年3月10日
Published Date 1989/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207716
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時代のニーズに応えた本
本書は,人口学,栄養学,公衆衛生学,遺伝学,疫学の各専門家の目から「日本人はなぜ長生きするか」という問題を多角的に検討したものである。かつて世界の途上国であった日本が,なぜわずか40年足らずで有数の長寿国になれたのか。「世界の謎」の1つというべき疑問に,わが国第一線の研究者が明快に答えている。
「日本人はなぜ長生きするのか」「戦後日本の急速な死亡率低下の原因は何か」という質問を,先進国と途上国の双方の学者から最近しばしば受ける。私が「ウーン」と答えに詰まる質問の1つである。保健婦の活動が,日本の健康水準の改善に大きな役割を果たしたことは,まぎれもない事実である。しかし,経済発展・科学技術の進歩・教育水準の高さ・生活全般にわたる西欧化など,その他の要因も答えの1つとなりうるであろう。ただ1つの理由で説明しきれない点が,この問題のむずかしいところである。日本人の長寿問題を,時間をかけて幅広い視野から検討しておかねばと思った矢先に,本書が出版されたのは,やはり時代のニーズであろう。
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