連載 開拓保健婦に看護のルーツを探る・20
双生児の未熟児,労力2倍,喜びも2倍
小島 ユキエ
pp.996-997
発行日 1987年11月10日
Published Date 1987/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207426
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双生児の分娩介助
貞広さんが開拓保健婦になって3年経った雪の降る朝,A地区の巡回指導中,B地区の農事組合長がハアハアしながら走り込み「保健婦さん大変だ……。早くきてくれ」といいながら,隣りのかみさんが急に腹痛で苦しみ出し,家族がウロウロしていると知らせてきました。5月末が予定日の妊婦です。長男の第一子も在胎8か月の早産で1,700gの未熟児でした。またも早産かと貞広さんは頭がジーンとなりました。数日前訪問したとき「長男が早産だったのでまた早くなるかも知れないから準備だけは早目にしておくように……」「身体に無理をかけないよう,水汲みだけは夫にしてもらうこと(井戸端は氷でテラテラしており,住宅からも離れたつるべ井戸である)」「お産の時元気が出るよう,よく食べて体力をつけておくように……」と言ってきたばかりでした。訪問時,どうも双生児らしいので,第一子分娩時にかかわった街の助産婦とも相談し,それとなく妊婦にも話しておかなければと考えていた矢先でした。
妊婦は2間しかない補助住宅のうす暗い奥の部屋で苦しそうにうなっていました。台所で急いで手を洗い妊婦のそばへ行き声をかけると「保健婦さんかい。ああよかった」とうなりながらも安心したようです。
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