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要約
(1)生後2か月で養子になり,3年半ぶりに実父母のもとに戻ってきた女児を,母親は受け入れられずに虐待するという事例に対する援助過程を考察した。
(2)実父母の未成熟なパーソナリティに加えて,孤立した地域環境,家族関係や養父母との人間関係のまずさなど多くの問題が虐待をひき起こしたと考えられる。そのなかで母親が最もストレスの多い状況下にあったことは否めない。
(3)保健婦は本児を受け入れない母親を問題視し,受け入れられない母親の立場,攻撃せずにおれない母親の悩みや発展的に変わりうる母親の可能性に目を向け,心を傾けることが必要と思われた。
(4)保健婦はケースや家族が,種々な健康問題に対して,どの程度対処する力があるかを判断し,それによって適切な援助をすることが必要である。しかしそれは,誰でもどの家族でも発展的に変わりうるという可能性を前提とした上でなされなけれぽならないということがわかった。
(5)本児が施設保護となって3年めを迎えようとしている。全く徐々にではあったが,本児は笑顔と落ち着き,次に,ことばをとり戻した。そして,最近になり,母親との面会も受け入れてきているように思われる。
この事例は,厚生省看護研修研究センター・看護教員養成課程の看護研究の時間に検討されたのものである。それによって提供者は保健婦としての基本的な姿勢についてなど,多くのことに気づかされ,学ぶことができた。この稿を終えるにあたり,ご指導ならびにご高閲をいただいた飯田澄美子教授に感謝申し上げるとともに,ご助言いただいた平山朝子教授,名原寿子先生に心より感謝いたします。また,事例検討に携わった保健婦養成所教員専攻2回生の皆様に厚くお礼申し上げます。
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