連載 スコットランド・デンマークのNHS・8
売家と唐様で書く三代目
山崎 摩耶
1
1新宿区立区民健康センター
pp.308-309
発行日 1982年4月10日
Published Date 1982/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662206502
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その夕方,通りのイタリア料理屋で久しぶりにスパゲティなどを堪能しながら,タブロイド版の《今週の催し物》に目を通していた。何しろ,カレーライス1杯と一流ホールのコンサート料金が同じくらいの安さで手に入る国なのである。
めずらしいコンサートが見つかった。ヘンデルの《水上の音楽》を古楽器を用いて演奏するらしい。是非聞きたい。だけど切符はどんな風に手に入れたらいいのかしら? 問いあわせると《リターンチケット》を開演2時間前から受けつけるという。いったい何のことだろうか……当日売りは売り切れているというのに……? 会場のロイヤルーフェスティバル-ホールの教えられたReturnという窓口に行くと20人くらいがすでに並んでいる。「リターンの意味を教えて……」と私の前の男の子に聞くと,けげんな表情をしながらも教えてくれた。「当日になって都合の悪くなった人たちが切符をはらい戻しに来るんだよ。窓口の人がA席4ポンド2枚! 誰かいますか? C席2ポンド1枚! 誰か……と叫ぶから,自分のほしい値段の席があったら,列の前から私がもらう……と順に言って買えばいいんだ。」何と面白い。悠長だが合理的なイギリス的習慣! そして1時間後,私とその子は,3ポンド(1,500円)のB席で並んでヘンデルを楽しんでいた。
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