特集 北海道開拓保健婦の足跡
住民と共に生き,共に働き……
思い出
少しでも開拓の人が幸わせになれれば
大橋 美江
1
1江別保健所
pp.36-38
発行日 1982年1月10日
Published Date 1982/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662206465
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昭和22年,札幌市で助産婦・看護婦・保健婦の資格を得た私は,僻地の無医村で困っている人のために"力いっぱい働こう"と大きな夢を描いて,厚真村(現在の厚真町)の軽舞という部落に駐在しました。その後昭和28年から身分は開拓保健婦に変わり,昭和45年身分の移管により保健所駐在保健婦となり現在の江別保健所に移るまでの約30年間,僻地で働いてきました。
開拓保健婦は昭和34年まで身分の保障がなく非常勤職員でした。何回か保障のある職場からの誘いがありましたが,開拓者の生活環境はきびしく,農作業の重圧,経済の貧困などにより健康に影響を及ぼし,私のような者を待っていてくれる素朴な人情味の豊かな人々の交流を断ち切れず,少しでも開拓の人々が幸福になれることのお手伝いができればと願ってきました。昭和51年家庭の事情で僻地での最後の勤務地となった大滝村を転出することになり,「保健婦さんはこの村に骨を埋めるものと思っていたのに行ってしまうのか」とお母さん方に泣かれるのが何よりも辛かったです。僻地での楽しかったこと,困ったこと,苦しかったことなど,どんなに書いても書ききれませんが,そのなかから釧路支庁の開拓保健婦時代の思い出を書いてみます。
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