助産婦事典
先天股脱の生後成立と,その予防
石田 勝正
1
1京都大学整形外科
pp.320-327
発行日 1975年6月25日
Published Date 1975/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204876
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1.はじめに
わが国は先天股脱多発国です。ところがこの事実を日本人自身に知らされていません。 「先天股脱は乳児疾患の中で一番多い病気で,しかも先天性なのだから奇型のようなものでしかたがないのだ」と,半ばあきらめられてきたようです。しかしこの考えは誤っています。
わが国に脱臼が多いのは,三角おむつや巻きおむつ,下肢(股関節)伸展位でデザインされたおむつカバーやベビー衣服などによって,下肢が伸展位に強制されているためと思われます。赤ちゃんにとっては布でも,ギプス包帯と同じような大きな抵抗となり,簡単に伸展位に強制してしまうことになるのです。生後まもない赤ちゃんが股関節も膝関節も屈曲した肢位をとっていることは,安眠時に裸にすれば容易に観察できます。これが自然の肢位で,すべての赤ちゃんの下肢を自然のままにしておくことは,生後第1日目からが特に大切です。したがって,ここに果たされるべき助産婦の役割は,極めて重大なものがあるのです。
Copyright © 1975, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.