視座
先天股脱発生予防とその実践
赤星 義彦
1
1岐阜大学整形外科
pp.9
発行日 1980年1月25日
Published Date 1980/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408906047
- 有料閲覧
- 文献概要
災害や疾病の発生に先だつて,その発生を防止する具体的手段を講ずることが"予防"であり,疾病の予防はすべての治療法に優先する.先天股脱発生予防の可能性は,過去100年有余にわたる治療法変遷の流れの中でもしばしば指摘されており,新生児,乳児検診治療の際オムツだけで自然治癒する例を自から経験した整形外科医の誰もが考え続けてきたことであつた.しかし具体的手段・方法論となると,確たる理論的裏づけに乏しく,医療から一歩踏み出した社会医学的成果の実証は難かしい課題として取残されてきた.
本邦で公衆衛生行政と密接にtie upした乳児検診が本格的に開始されたのは1950年で,飯野ほか東北大グループの極めて地味な忍耐を要する研究は高く評価されるべきであろう.その経緯は今田(整形外科,14:343,1963)が発症予防と治療の面から詳述しているが,学会でも種々討議され,ほぼ10年で全国的な保健所検診が普及し定着した.1960年頃より,Ortolani,von Rosenらの新生児検診,治療が各地区病院で行われるようになり,乳児に対するPavlikのRiemenbügel法も急速に普及して治療成績の著しい向上を斉らし,最近では補正手術を必要とする難治性股脱は著しく減少してきた.
Copyright © 1980, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.