食と保健指導 地域小集団における保健活動の評価尺度(8)
食の現象把握こそ
豊川 裕之
1
1東京大学医学部保健学科疫学教室
pp.22-26
発行日 1975年1月10日
Published Date 1975/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205553
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前号において,"患者サイドに立つ"ことの意味について,人間の認識活動(即ち感覚的,知的,霊的了解)の面から論じた。又臨床看護は,家族や家庭から引き離された患者が,そのことゆえに感覚的了解が不足しがちであり,その状態におかれることによる不安感と欲求不満を取り除くことが当面の主たる任務になることを述べた。一方,地域看護は家族ないし家庭という感覚的了解の機能する人間集団に保護された患者を対象とする業務であるとし,そこでは知的感覚を主たる任務とすることを述べた。そして,患者サイドに立つことがとりもなおさず,患者の認識活動に合わせることであると主張した。更に,たいせつなことは上記の区分が形式論的であって,ケースに応じていろいろな認識活動のニュアンスがあり,一概に論ずることはできないことも注解した。
このようにして,本論文の(1)から(7)に至る間一貫して述べられたことは人間の認識活動の諸相であり,それらの了解相の問には断層があるという前提であった。この感覚的,知的,霊的了解の機能領域は三つ重ねの餅のごくであって,垂直方向から見下すとオーバーラップしていて,一見断層はないかのごとくに見えるが,水平方向から見ると重複しているところがないように,はっきりした断層がある。
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