声
精神衛生担当として
菅原 澄子
1
1秋田県横手保健所
pp.472
発行日 1973年7月10日
Published Date 1973/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205317
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ここ3年間ほど精神衛生担当保健婦として,さまざまな患者と家庭をみてきた。いつも家の中も外も雑然として,足の踏場もないほど散らかしている家や,へやの中に古い大きなふろ敷包みを3つも4つも置いていたり,古いつづらを出して,人間のほうがへやの片隅に小さくなっていたり,荷物がたくさん出ていてへやを占領している例も多くあり,人間と物が家の中で,てんでばらばらにいるという感じを受けることがたびたびあった。なぜこんな家が多いのか,原因はどこにあるのだろうかと考えさせられた。気をつかう精神障害者をかかえて,家族は患者のことで気持ちがいっぱいで,ほかのことにはほとんど気がつかないのかもしれない。
また患者が非常に暴れたり,騒いだりしなければ,特に治療を受けさせずに,気ままにさせて,そのまま放っておく家族も少なくない。現在患者を同意入院させると,1か月に国民健康保険では7割治療費が出ても,約2万円近くの医療費が(自己負担)かかるため,経済的に困り,なかなか早期治療に結びつかない場合もある。またいまの病院は措置入院や生保で入院している場合,10数年も入院している患者がかなり多く,入院退院の動きはきわめて少ない。長期間入院させている家族では,しだいに面会に来る回数も少なくなり,病院に捨てられて帰る所のないケースもある。
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