人とことば
公衆衛生担当者に一言
笹田 衛
pp.133
発行日 1970年3月15日
Published Date 1970/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204037
- 有料閲覧
- 文献概要
公衆衛生,ことにその環境衛生や食品衛生などにおいて,最近特に種々の問題が起こっていることはご承知のとおりである.その個々のことは別として公衆衛生を大別して考えると日々学問的に追及研究する場合と,それを現実に即して公衆のために役立たしめ,生活を豊かにしてやる場合とに分けるべきであろうか.前者はとにかくとして,後者の方が,すなわち保健所行政となり全国において種々の形となって行なわれているが,そのことについて愚見を述べて見たい.
現今,この行政は厚生省から府県をとおして,または各府県衛生担当者から独自にほぼ画一的に保健所長を通じて行なわれていることに注意すべきであろう.私の戦後約20年間の官界生活における経験によると,米国の占領時代はとにかく別として,その後は仕事が次第に統一され画一されて来たような気がせざるを得ない.このことはある場合においては進歩を示すが,場合によるとその逆とまではいわぬにせよ骨折り損の草臥れ儲けと思わざるを得ないことがある.かつて私の保健所長時代(米国占領時代)赤痢予防のため各保健所単位に500人ずつの糞便検査を行なったことがあった.当時,私は独自の考えから2000人分を県当局に要求し,その最も流行せる1区画に実施し20人近い保菌者を見いだした.おかげで翌年は非常な好結果を得たことを記憶する.
Copyright © 1970, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.