連載 助産婦学生の実習指導・1【新連載】
教師講評
母性保健担当から,他
荒川 文子
1
1母性保健
pp.35-36
発行日 1971年5月1日
Published Date 1971/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204131
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妊産婦の不安はあって当然であり,私達も簡単に不安の除去ということをいっているが,知識を得させること,医療関係者が言動に注意するだけでは根本的に不安の除去にならない。動物園のゴリラは赤ん坊の時に集団から一匹離されたために赤ん坊を育てている所を見たことがなく,生むことはできてもそれを抱くことも哺乳することも知らず殺してしまうという。人間の集団はゴリラと違って文字や言葉を持っているとはいっても,その社会は分業化し,家族は核家族化し兄弟は少なく,近所の交際もなく,子供を育てている現場を見ずに母親になってしまうケースが多くなり,母親になることの不安が妊娠中からつきまとい,このことが潜在意識としてあり,妊娠中も一つ一つの症状を快いものと受けとるよりも不快と受けとめる方が多くなり,この不快の症状が積り積って大きな漠然とした不安となっているものと思う。
このことからこのケースレポートでもいっているように子どもをもっているような集団に参加する,また同じ状況にある集団に積極的に参加し,母親とはこういうもの,子どもとはこういうものということを知ることが不安解決の大きな「てがかり」となると思う。
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