ニュース診断
<ヤミ>を払うために
久米 茂
1
1深夜通信
pp.453
発行日 1973年6月10日
Published Date 1973/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205312
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"物情騒然"ということばがあるが,まるで昨今のわれわれのためにつくられたのかと思いたくなるほどのむごさ,あさましさが身辺を包んでいる。上は"角マンダー"とかいう選挙法改悪を,ほとんどだれにも相談することなくやらかそうとした首相の厚顔・ゴリ押しから,下は小中学生の自殺の多発……。そしてその中間(?)には全国津々浦々にわたる公害の爆発がある。どこを向いても<真っくらヤミ>の世だ。その<ヤミ>は思想や経済や科学や教育,宗教…をのりこえて私たちの前に立ちはだかっている。いや身ぐるみ包んでいる。このさきどうなるのか,だれにもわからないほどこの<ヤミ>は濃い。
この<ヤミ>の正体は何だろう?説明抜きでいうことを許してもらえば政治悪だ。政治公害といい直してもよい。この100年,こんにちほど政治悪が露出したことはないといっていい。周知のとおり,明治期には軍事が先行し,政治があとを追いかけた。大正期には両者が雁行あるいは政治がやや先行した。そして昭和にはいると軍事専横となって破局に突きすすみ,国も民衆も足腰立たぬほどの目にあった。戦後は経済がまず前面に出,しばらくたって軍事が頭をもたげた。この数年両者は再び雁行の形をとって経過している。なんども選挙があり,そのたびに"選良"を国会におくったのだから,政治は厳然とあったのではないか,という反論があるかもしれない。
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