声
5年目の雑感
福田 睦子
1
1京都府長岡京市役所
pp.389
発行日 1973年6月10日
Published Date 1973/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205296
- 有料閲覧
- 文献概要
「保健婦さんて,いったいどんなことをする方なんですか」という問いかけにでくわしたとき,とっさに口をついて出たことばは,「病院のなかだけでなく,地域のなかで,人々がより健康的な生活をしていけるよう援助する者なんですよ」と,いともすっきりと答えたものだった。公衆衛生看護婦として,地域住民に最も密着した活動ができる場は,市町村であろうと考えてとびこんでから4年たった。
そのなかで日ごとにふくれあがってくるのは,日本という国の親は,われわれ子供に対してなんと冷たいのだろうという,やりきれない感情である。憲法第25条には,"すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国はすべての生活部面について社会福祉,社会保障および公衆衛生の向上および増進に努めなければならない"とうたってあるが,日々おしよせる生活環境破壊のなかで,ますます空文化されつつある現状につきあたるとき,当初ほとんど心のかたすみに追いやられていた"そううつ病"はもくもくと芽を出し始め,"国民総生産世界第2位,国民の生活水準は向上の一途……"というなり鐘を聞くにいたっては,いらいらと悪化の一途をたどり始めるのだ。
Copyright © 1973, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.