声
弱い私だが
森本 絹子
1
1静岡県裾野市役所
pp.388
発行日 1973年6月10日
Published Date 1973/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205295
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看護婦4年,保健婦2年の患者と住民とのかかわりあいから,常に看護者になりきれない,一歩離れて患者や住民に接している自分を自覚するにつけ,なぜそうなるのかと自問自答の苦痛の連続の6年間だった。そこから得た結論は,自分の弱さを認めよ,ということだった。弱い,たよりない私であり,やっとの思いで,それでも自分の足で立っている私。本心,寂しくてたまらぬ自分を認めたときから,だれもが身近な人として感じられるようになった。それは労働者としての自分をはっきり確認し,意識したことに始まる。
死を目前にして,あたりまえの人として答えてほしい願いをもってくい入るように見つめ,「僕,だいじょうぶ?」と問いかけてきた患者。一瞬血の気がひく思いで「どうしてそう思うの?」と思ったが声にならず,あとの答えを聞かねばならぬこわさに,紙に書いたような励げましのことばをいって,患者のいいたいことを封じ込めてしまった私。
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