講座 人類生態学1
"人類生態学"二様の使われ方
鈴木 継美
1
1東北大学医学部公衆衛生
pp.56-59
発行日 1973年1月10日
Published Date 1973/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205209
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はじめに
"生態学的な思考"の重要性は,近年すっかり市民権を獲得して,どんな畑の人々も生態学ということばを軽々と使うようになった。ところで生物とその環境のかかわり合いを研究することを大テーマとしたこの学問(生態学)のなかで,人間はどのように位置づけて考えられるのだろうか。人間をその他の動物と同じように扱うことができるかどうか,あるいは何が違う点なのか,これまでに数多く存在し,それぞれがその学問の意義を主張している諸科学のなかでどんな位置を占めるのかなど,多くの疑問が人類生態学に関連して生じる1,2)。
とりわけ,動物や植物を研究してきた人々と,人間を研究の対象としてきた人々の間で,人類生態学についてのとらえ方が微妙なくい違いを示すことがあり,それが,たとえば"生態学"ということばの使い方における違いとして表われることがある。もっともこれは人間とその他の生物という対象の違いとしてあらわれるだけでなく,ときには生物とその環境との分析において,環境に重点があるか生物に重点があるかの違いとしてみられることもある。
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