講座 人類生態学3
"生態学的仕組み"について
鈴木 継美
1
1東北大学医学部公衆衛生
pp.192-195
発行日 1973年3月10日
Published Date 1973/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205244
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人為的環境との取組み
技術の導入によって,人間・環境系の変容が起こり,その結果として生じてくる新しい問題を解くために,更に新しい技術が求められる。先に人間とあわびの関係を論じた際に述べたことでもあるが,このような連関する矛盾とそれに対処するための技術開発とは個別の社会的規制のもとで進められている。あるいは文化というものは,そういった矛盾の連関の起こり方,問題の解き方にみられるパターンに最もよく表われるものかもしれない。
それはともかくとして,人間の生活がある時代と場所との限定のもとで営まれるものである以上,その時代と場所に特徴的な技術の体系と社会組織とによる制約をまぬがれることができない。すでに述べたように,渡辺仁はこの2つに儀礼を加えてそれを人為的環境と呼んでいる。そして,この人為的環境の仕組みが,人類生態学の研究を単なる環境生物学から区別する複雑さの源泉であることもまた渡辺の指摘するとおりである。とするなら,ある時代と場所に特徴的な技術の体系と社会的組織こそ,とりあえず人類生態学研究の標的としてねらうべき対象になるはずである。もちろん,人為的環境の内容として更に加えるべきものがあるとして議論を進めることもできるし,あるいはそういった人為的環境の修飾を取り去ったところで人間を考えてみようとすることも可能である。しかし,そのいずれにしても,人為的環境についてのより彫りの深い検討なしにははじまらない。
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