研究・調査・報告
大阪府の人工乳依存に関する調査—保健指導の視点
中島 紀恵子
1
,
鈴木 敦子
2
,
福井 典子
3
1千葉大学教育学部
2大阪府立公衆衛生学院看護部
3大阪府衛生部医務課看護係
pp.35-44
発行日 1972年4月10日
Published Date 1972/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205068
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はじめに
母親が母乳で乳児を保育することは,分娩に引き続いて期待される母親の社会的,生理的機能である。ところがこの母乳栄養は近年ますます減少傾向にあり1),アメリカ,イギリス,フランスなどの諸国の報告によると,1950年ごろから急激な減少傾向が始まったという。わが国では2)1946年(昭和21年)1月,大阪市において戦後最初の乳児体力健診が開催されているが,このときの人工乳は40%であり,母乳は72.2%である。乳製品統制解除前後の3)1950年(昭和25年)東京都における母乳栄養児は70%を占めていたのに,1957年(昭和32年)には60%,1961年(昭和36年)には40〜30%に減少し4),1968年(昭和43年)には20%台にまで減少しているから,1955〜1960年ごろから著しい減少傾向があるとみられる。
このような実情に対して5),昭和42年に日本小児学会栄養委員会が勧告を出している。その背景には6,7)戦後25年以降の企業の販売路の拡充があり8),職業婦人の質的変化,行政的には戦後いち早く出された新人口政策基本方針に基づいた一環した乳児哺育の重点活動があり,それらの諸事情が重なって,今日の早期人工乳依存の傾向や,母親の母乳に対する認知不足があると考えられる。
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