声
仕事の味わいとあせり
木原 千代子
1
1広島県西条保健所
pp.67
発行日 1972年2月10日
Published Date 1972/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205035
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玄関が近くなると,子供たちの"君にも見えるウルトラの星遠く離れて地球に一人……"と歌うきげんのよい声。また兄弟げんかが想像される言い争いの声。日によって,わが家のざわめきは異なるが,このことが,1日の仕事のあれこれを考えながら帰る私に,仕事と家との区切りを与えてくれる。
この道15年。お嬢さん保健婦から3人のママさん保健婦にと,私自身の変化もさることながら,最近の保健婦業務の多忙さは,とてもことばではいい尽せないものがあり,1日が24時間でなくもう少し長ければと,欲張ったことを考えることもしばしばである。あすまでにはこれをしておかなければと心あせれば,思わず帰宅の時間が遅くなる。家に帰ると子供たちが「ただいま」という私の声も終わらぬうちに,「遅かったね。本読みの宿題があるから聞いてよ。読んだらここにママちゃんの印鑑がいるよ。」などとやつぎばやな催促。"ああ,しまった。もう少し早く帰ってやればよかった"と自分につぶやき,子供たちへのサービスに精を出す日の多いこと。"家庭と仕事"は,どちらも私にとって手離すことのできない大切な宝だが,それ故に板ばさみの悩みにぶつかることも再三である。
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