巻頭言
お仕事ですけど
井手 睦
1
1聖マリア病院リハビリテーションセンター
pp.103
発行日 2014年2月10日
Published Date 2014/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552110392
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三十歳すぎたばかりのころに吉備高原医療リハビリテーションセンターで2年弱勉強させていただいた.当時の武智院長先生から「井手君,あんたの将来の仕事は労務管理じゃ!」と唐突に頭上から言われた瞬間が心に焼き付いている.もちろん生意気盛りの私は内心“はぁ,なにそれ”としらけていたのであるが,今はその言葉が身に浸みる.労務管理に振り回されている.
学術的な活動がメインではない“ふつうのリハビリテーション医”にとっては,抱えるスタッフが“きちんとお仕事”できるかどうかで院内での評価が決まる.彼らはリハビリテーション医にとっては部下・同僚であると同時に収益をもたらす医療資源でもあるのだ.ところが私の“医療資源”たちは寡黙な薬や検査機器とは違って,喧嘩したり・深い仲になっていたり・住宅ローンを組んだり,と160名の中でいつも騒動している.店じまい後のリハビリテーション室は混沌としていて,中近東の市場に迷い込んだかのようなカオスさえ感じてしまう.今日だって腰を痛めてホットパックしている奴の隣のプラットホームで妊婦が横になって腹をさすっている.それでもノルマの単位数は稼いでもらわなくちゃいけないねぇ.そう言えば,井手家の先祖は鍋島藩内で遊郭を経営していたとお爺ちゃんが言ってたけど,俺のこの所業はDNAのなせる業かぃ?
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