特集 現代社会と家族・保健婦がみつめた実態をもとに
家族自身の被害者意識の転換を—身体障害者の施設から
浪花 恵子
1
1のじぎく園
pp.21-23
発行日 1971年10月10日
Published Date 1971/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204961
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障害者の疎外因は家族自身にもある
本来人間生活の基盤である家庭,幼い生命が与えられてから,人間が人間として生きるための育成の場である家庭。しかしその家庭の構成員である個々の人間は,すべてが健康で優秀な人間として生きることを許されているとは限らない。そこには多くの限りない不幸と病苦が巣くうこともめずらしくない。人間の優劣に対する価値基準の問題はともかくとして,私たちが生きてからこの方,健康な身体を与えられ,自らの可能性を信じて生き続けたいと願わない者は決してないであろう。
しかし,それにもかかわらず私たちのこの社会には,あまりにも多くの障害が立ちはだかっている。あらゆる障害をもつ者,あらゆる差別のなかで身もだえする者,こうした非道な人生を歩まずにおれない人々がともに手を携え,暖め合って生きることは決して豊かにすぐれた人間への卑屈な挑戦でもなければ,また排斥して生きようとすることでもない。それは苦い味を知っているからこそ抱く人間の限りなきいたわりにほかならない。重い十字架を背負っているからこそ知る人間の生きることへの尊い思いでしかない。
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