特集 精神分裂病患者への技術論
私の技術論
竹村 堅次
1
,
長岡 喜代子
2
1烏山病院
2立川保健所
pp.39-40
発行日 1971年2月10日
Published Date 1971/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204848
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さいきん,ある公式の研究集会で,私は精神分裂病はE.ブロイラー(1911)以来のもので,60年を経た現在,再検討の余地ありという趣旨を述べた。たしかに,病気そのものは存在する。だが,その多種,異種性は疑うべくもない。いま原因論に深くふれる余裕はないが,ただこの種の病気は一定の年齢で,人口に対し一定の割合で常に発生するという疫学的観察が重要である。また,この病気に対する無理解と偏見の根強さを治療と予防の見地から強調しておきたい。以上の見解からは,単に病名を変えればよいということにはならないはずである。明快な解答を示す代りに,私はある障害者自身がK.メニンジャーの言葉を引用して「病名をつけず,傾向,状態,行動のひとつの形として記録し医療の参考とする」という思い切った提案をしているのを紹介しておこう。
この病気を理解するには,まずなおり易く再発し易い特徴と真の社会復帰への到達には長年月を要し,家族の物心両面の負担が大きいことを知るべきだ。そして再発の原因はまだわからない(私は自然発生的とみる)。治療を一口でいうならば,身体療法よりも精神療法である。換言すれば慢性疾患のリハビリテーションと病院外医療である。リハビリテーションの実績はあまり上がっていないが,それは真の臨床チームがまだ結成されず,チームワークの意味を精神科医自身すらよくわかっていないからである。
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