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精神病院告発ばやりの昨今だが,告発者が堂々と公開の論陣を張り医療界の耳目を集めたとたんそれが実はニセ医者であったとなると話が少しばかりややこしくなる。もう13年も前のことだが,筆者が直接見聞し今でも十分通用する話と思うので,あえて披露する。
当時,日本医師会雑誌に武見会長あての「非医師経営の一精神病院の実態について」という長文の投稿が掲載された。悪徳精神病院を真正面からとらえ,O医師と名乗っていた(実は偽名であることがあとでわかったが)。精神病院ブームが頂点に達したころだったが,たぶん告発第1号ではないかと思う。紙数の関係でその全容をお伝えできないが,一部を紹介すると「S病院に入院中の患者の大部分は精神衛生鑑定医の診断を受けておりません。普通の家庭でちょっと様子がおかしいから見て欲しいといっては連れてくる患者です。私が診て分裂病や躁うつ病その他の精神病ではない患者もあります。それに誰れ彼の区別なく電撃療法やインシュリン・ショック療法を施こすのです。医師の認可もないのに保護室を乱用するのです(中略)。感情問題で電気を乱用する場合もあります。一度入院すると絶対に退院を認めない。信書の発受を禁じ屋外運動も禁じます。これで苦情を申し出ると電撃で脅かす,余りにも不合理だと認めましたので,赴任後,根本的な改革を断行し,県衛生部と協議のうえ徹底的に改革のメスを入れましたところ,突然解雇の言い渡しを受けました(中略)。私達が誠意をもって患者に接触し(中略)指導し医療に努めることを,保険診療報酬請求にプラスにならないと誹謗するごときは,完全に精神病院経営の資格のない者といわねばなりません。かかる不徳義な者に将来,病院を経営させることは日本医療界の不名誉であり,かつ社会正義の立場からも放置してはならない社会悪の一つであろうと存じます(下略)」。
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