特別寄稿
地区組織活動に対する私見—石垣氏の批判に応えて
柏熊 岬二
1
1大正大学
pp.76-80
発行日 1969年12月10日
Published Date 1969/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204561
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1 はじめに
去る7月下旬,国保の保健婦研修会が社会保険大学校で開かれた。そのパネル・ディスカッションでの私の発言がその後も尾を引いて大きな波紋をまきおこしているという。話の順序としてその経緯をかいつまんで述べておこう。研修会の第2日,7月23日の午前中,地区組織活動の事例報告が現場の保健婦さんならびに市長・町長から行なおれ,引き続いて午後,報告された事例を素材にして研究討議がなされたのである。パネル・メンバーは石垣純二氏を司会に,公衆衛生院の橋本正巳部長,京都大学の西尾雅七教授,それに私という顔ぶれであった。ショックを起こしたと伝えられる私の発言の要旨は次のようなものである。
「午前中の報告事例もそうであるが,従来の地区組織には体質的に疑問な点がある。それは前近代的な性格をもった地域共同体,すなわち区(部落)を基盤にしているからである。しかし,地域共同体としてのコミュニティは都市化の波の中で次第にくずれつつある。かつての機能をもたなくなってきているのである。解体といってもよい。にもかかわらず,いぜんとして古い形の地区組織を活動の軸とするというのは,例外はあるかもしれないが,大勢としては時代に逆行したものといわなくてはならない。保健婦たるものすべからく冷静に現実を直視し,時代に即した活動を展開してほしい。地区組織活動にしても,従来の体質を改めて新しい形のものを志向しなくてはなるまい。」
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