特集 都市の保健婦
対談
都市の保健活動—東京都のシビルミニマムをめぐって
松井 凞夫
1
,
川上 武
2
1東京都衛生局医務部
2杉並組合病院
pp.10-22
発行日 1969年7月10日
Published Date 1969/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204459
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■公衆衛生に対する配慮に欠くシビルミニマム
川上 今度東京都で,「シビルミニマム計画」という形で,今後3〜5年間の事業計画を発表しました。これは,ことばが目新しいということだけでなしに,ナショナルミニマムという憲法25条の日本国民の基本的な生活水準を示したことに対して市民としての最低限の人間らしい生活の見通しを明らかにしたもので,その意図は非常にいいんじゃないかと思うんです。しかしいま学会でもシビルミニマムということがやっと論じられているときであり,むしろ学問の成果を先取りしたというか,まだ学会ではこれといった定見もないとき,すでに行政のレベルに乗せたものだといえます。そのためにいそいだためかわれわれがシビルミニマム計画を見ても,必ずしもシビルミニマムの言葉通りにいっていない点が眼につきます。中で一番比重の多いのは医療ですが,医療の中を見ますと,治療的な部分にあたる老人病院だとか,リハビリテーションにあたる心身障害児対策とかは,ものすごく金が出ている。逆に保健所のほうは,金の出方が,はっぎり言って非常に少ない。幾つかの保健所の新設と保健相談所というようなものを12つくる,ということがふれてあるんですが,保健相談所といっても,結局,保健所をつくるのがむずかしいから,保健相談所をつくるということだけで,そういう点では,ぼくは,全体の感じとして保健に対しての配慮が非常に弱いと思います。
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