特集 都市の保健婦
都市化と住民生活の構造—新しい地域社会形成への視点
奥田 道大
1
1東洋大学社会学
pp.23-27
発行日 1969年7月10日
Published Date 1969/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204460
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1.
都市化と住民生活とのつながりをみるばあい,だいいちに注目されるのは,都市化が徹底的におしすすめられた段階において,住民生活の基盤である地域社会はいったいどうなるかとの課題である。これまで社会学においては,都市化の過程は地域社会の衰退・解体を導くとの方向づけにおいて説明してきた。住民生活とのかかわりにおいていえば,職住の分離(生産点と生活点の分離)というか,職場は通勤化現象に端的にあらわされるように,交通機関を媒体として居住の地域的範囲を遠くこえ,地域社会は単に日常消費生活機能をみたす場となった。また日常消費生活といっても,買物,レジャーひとつとってみても,しだいに地域的範囲をこえているところから,地域社会は文字どおり"寝室地域"として,ささやかなマイホーム生活のいとなまれる場へと転じた。ひとりひとり住民は,「隣りは何をする人ぞ」といった式に相互の近隣的むすびつきはうすく,地域社会レベルの政治・行政的かかわりについても,極力避けるという姿勢を示している。地域的無関心層といわれる住民類型がこれにあたる。したがって,地方自治体においても,こうした地域的無関心層・根無し草層・アウトサイダー層としての住民一般をどう掌握できるかがおおきな行政課題となることは,とうぜんである。
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