スポット
廃用性萎縮
小坂 英世
pp.65
発行日 1969年1月10日
Published Date 1969/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204365
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筋肉の廃用性萎縮
以前私は,訪問用に着脱の便利なスリップ・オン式の靴を愛用していた。そして雨天の際や,悪路を行くときは軽登山靴をはくことにしていた。しかしこの1年来は,あらゆる天候,いかなる地域にも万能でありうるようにと考えてるチロリアン・シューズにはきかえて来た。山好きな人なら知っているだろうが,このチロリアン・シューズとは,登山靴と同じ作りの頑丈な短靴で,ビブラム底(キャラバン・シューズの底と思えばよい)が張ってある。したがって底がかえらない(しならない)。そこでこの靴をはく要領は,登山の時のように,足裏をかえさずに踏みしめて歩くことである。
ところで最近,服装の関係から,ふつうの短靴をはく機会があった。歩いているうちに土ふまずのあたりに痛みを感じた。痛みは帰宅してからも続いた。あるいは?と考えたので数日続けてふつうの短靴をはいてみたところ,次第に痛みを感じなくなった。果して足底部の筋肉群の廃用性萎縮にもとずく痛みなのであった。つまり登山靴風の靴をはいていると,底がかえらないものだから,足裏をかえす作用をする筋肉は使われないことになる。その結果,その筋肉が萎縮をおこす。萎縮した筋肉に,底がかえるふつうの靴をはいて,足裏をかえす作業をあたえると,疲労から痛みを感ずるようになる次第である。しかし,くりかえし作業をあたえると筋肉が肥大し筋力が回復して,もはや痛みを感じなくなるわけである。
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