ほんだな
—吉田 秀夫 著—医療保障入門,患者ケアの問題点と新しい方向,疫学入門
川上 武
1
1杉並組合病院
pp.70-71
発行日 1968年9月10日
Published Date 1968/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204278
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いま日本医療をささえる二本の柱である医療制度,医療保障の分野には,小手先の改善では解決困難な矛盾が山積している。前者はインターン問題に端を発した医学生運動の激化に,後者は昨年末に厚生省より発表された"医療保険の抜本的改革試案"をめぐる動きに代表される。とくに後者は健保特例法(1967年秋より実施)で明らかにされた意図を,医療保険ぜんたいにおしひろめようとするものである。その要点を一言でいえば,戦後の民生化の動きのなかでまがりなりにも充実され,社会保障的性格をもちはじめてきた医療保険に,再び自由診療の拡大を導入しようとする試みである。
これは表面的には医療保険の数字問題ということより立案されたようになっているが,これにより医療の原則である"万人が平等に医療をうける権利"が侵害され,やがては医療の自殺行為につながっていくにちがいない。そういう意味では,医療費を中心とした医療保険の問題に限局せず,医療ぜんたいの在り方とも深く関係してくる。この実施にあたっては,こんごの医療関係者,患者などの反対運動如何によって,その内容が変えられねばならない。そのためにも,その本質および歴史的背景はすべての医療関係者の必須の知識であり,こんごさらに混乱が予想される医療の分野で,どう生きていくかの指針として欠くことのできないものとなってきた。
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