病院図書館
—吉田秀夫著—「医療保障入門 その歩みと課題」
川上 武
1
1杉並組合病院
pp.42
発行日 1969年2月1日
Published Date 1969/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541203559
- 有料閲覧
- 文献概要
矛盾する医療保障問題の本質に迫る
いま日本医療をささえる2本の柱である,医療制度・医療保障の分野には,小手先の改善では解決困難な矛盾が山積している.前者はインターン問題に端を発した医学生運動の激化に,後者は昨年末に厚生省より発表された"医療保険の抜本的改革試案"をめぐる動きに代表される.とくに後者は健保特例法(1967年秋より実施)で明らかにされた意図を,医療保険ぜんたいにおしひろめようとするものである.その要点を一言でいえば,戦後の民主化の動きのなかでまがりなりにも充実され,社会保障的性格をもちはじめてきた医療保険に,再び自由診療の拡大を導入しようとする試みである.
これは表面的には医療保険の赤字問題ということより立案されたようになっているが,これにより医療の原則である"万人が平等に医療をうける権利"が侵害され,やがては医療の自殺行為につながっていくにちがいない.そういう意味では,医療費を中心とした医療保険の問題に限局せず,医療ぜんたいのあり方とも深く関係してくる.この実施にあっては,こんごの医療関係者・患者などの反対運動いかんによって,その内容が変えられねばならない.そのためにも,その本質および歴史的背景はすべての医療関係者の必須の知識であり,こんごさらに混乱が予想される医療の分野で,どう生きていくかの指針としてかくことのできないものとなってきた.
Copyright © 1969, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.