連載 保健婦と患者心理・10
在宅患者の保健指導のために
性の異常と倒錯—性のなかの患者をめぐって
加藤 千代司
1
1岩手県立盛岡短大
pp.75-79
発行日 1967年12月10日
Published Date 1967/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204088
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「クレオパトラの鼻がもうすこし低かったら大地の全表面はまっく変ったものになっていただろう。」この言葉はパスカルのパンセのなかで語られているものであるが,このあとにつづいて彼は次のようにのべている。「人間の空虚であることを十分に知ろうと思うならば,恋愛の原因と結果を考えてみさえすればいい。その原因は"なんだか私にはわからないもの"であり,またその結果は"恐るべきもの"である。このなんだかわからない些細なものが,全地を王侯を軍隊を全世界を動かすのである。」
パスカルは人間における恋愛というできごとに対して,その原因は「わからないもの」であり,その結果は「恐るべきもの」と説明しているが,現代社会の性の異常な現象をみるとき,彼が恋愛のなかに洞察した,人間のはかなさ,むなしさ,さらに恐ろしさを見るのである。次の文は,新聞の人生案内に出た,現代の知性を代表する大学生の思想である。
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