特集 脳をめぐる今日の医学
水俣病とその症状
岡嶋 透
1
1熊本大学第一内科
pp.43-47
発行日 1967年12月10日
Published Date 1967/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204076
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はじめに
昭和31年6月のある日,当時熊本大学第1内科の主任であり,また附属病院長でもあった勝木教授(現九大教授)は新日本窒素肥料KK水俣工場附属病院長細川博士の来訪を受けた。細川博士の辞去したあと勝木教授はわれわれ医局員に「水俣に変った神経疾患が出ているそうだ。脳炎のようではあるが熱はない,ある特定の地域にだけ出ている。何かの中毒かもしれない」ということを洩らされたが,この病気が後に全世界から注目をあびようとは夢想だにしなかった。
患者の発生はその後も続き,奇病対策委員会が発足し,8月末からつぎつぎと患者が入院して,1ヵ月後には7名となった。小児科にも5名入院した。当時患者を収容したのは藤崎台病棟で,旧陸軍病院の分院をそのまま使用しており,狂躁状態を示す内科患者と,手足を強直させ身動きもできない小児患者が同居した大部屋は何か寒々とした印象を与えたものである。
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