八丈の島から
第6回 島のお年寄りとのそもなれそめは
小笠原 登志子
1
,
明神 免亀子
1
,
膳亀 和子
1
,
古川 千寿子
1
,
八代 悠紀子
1
1町立八丈病院
pp.50-51
発行日 1967年10月10日
Published Date 1967/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204043
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□ことしの老人健診で……□
「結婚は?」「19でね。好きで一緒になったから……」目のパッチリしたおばあちゃんの顔をしばし眺めて……「そうでしょ,そうでしょ……!」8月のある日,涼しい風の吹きぬける古いたたみの部屋で,私たちの研究資料としても用いたいものと相当細かく項目の並べられた健診票を大忙しで埋めながら,忙中閑あり(?)でしょっ中話が脱線する。脱線しながら,文字通りつき合わせた膝を通して通いあうものに,この島で仕事をする自信のようなものが湧いてくるのである。
65歳以上を対象とした今回の健診は,対象者数1,090月遅れのお盆をひかえた8月初旬の3日間を使って受診者は223名,この中から血圧測定と聴打診の結果,要精検とされたもの80名。受診率20%,要精検の率は受診者の36%であった。健診前に十分な準備の時が得られず,数日前に各地区の老人クラブの会長宛てに,会員への広報依頼と協力要請の文書が町役場の民生課より出されたのみで,私たちとしては,頭の中にあるにはあった計画を実行に移せぬままに,目前に迫った時をうらめしくにらんだわけであるが,「この機会に,有力な地区組織としての老人クラブの実際を見るのもいいじゃないか」との院長の言に,なるほど,機会は活かして用いてこそ機会なのである……と,何だか山で踏み跡に迷って縦走路を見失い,ウロウロしていて,ふとチューインガムの紙など捨ててあるのをみつけたときのようにホッとした気持ちになった。
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