連載 発達医学・1【新連載】
発達医学とは
平山 宗宏
1
,
三宅 久子
1
1東京大学医学部保健学科母子保健学
pp.70-75
発行日 1967年9月10日
Published Date 1967/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204029
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1.まえがき
発達医学developmental medicineとは
小児の成長とか発達という言葉は使いならされているが,発達医学というとちょっと耳新しい用語かもしれない。これは,ヒトが受精,あるいはそれ以前の性細胞の時期からはじまって子宮内の発育をとげ,出生し,成人に達するまでの「成長・発達してゆく全過程」を,医学的に追求し,研究し,さらに臨床・指導の上に応用しようとする学問である,といってよいであろう。小児の特徴とされるのは,申すまでもなく成長・発達するということであるから,この発達医学が小児に関わるすべての学問分野の基礎である。発達医学の正しい知識なしに小児のこと,母子保健のことを論ずることはできない。
わが国において発達医学という用語をはじめて公式に使ったのは筆者の恩師,高津忠夫教授であろう。東大保健学科に母子保健学講座が創設されたときにも専攻分野として発達医学を第1に掲げてある。発達小児科学developmental pediatrics,発達神経学developmental neurology,発達診断学developmental diagnosis,というような語は著名な小児心理学者Gesellも早くから用いてはいるが,母子保健学という母子一貫した保健の立場で,細胞期から成人に至るまでの発達医学を論じるのはむしろこれからの学問体系といえる。
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