研究
質問紙による家庭養育環境スクリーニングの研究—JHSQによって得られた情報の保健指導への活用
安梅 勅江
1
,
上田 礼子
2
,
平山 宗宏
1
1東京大学医学部母子保健学教室
2東京都立医療技術短期大学
pp.1030-1033
発行日 1988年11月10日
Published Date 1988/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662207645
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はじめに
障害のあるなしにかかわりなく,発達過程にある子供にとって,養育環境が重要であることは広く認められてきている。しかし,わが国においては,乳幼児の養育環境の重要性が強調されてはいたが,スクリーニングの対象として養育環境を取り上げ,環境上のハイリスク者をみつけて,早期に支援を開始する検討はあまりなされなかった。これは,私的な領域である家庭を,調査対象として意識的・無意識的に避ける傾向があったことと,それに伴う方法論上の困難があったことばかりでなく,社会的要請が少なかったことなどが理由として挙げられる。核家族化・都市化が進む以前には,祖父母や近隣の育児経験者から育児に関する情報を容易に得ることができ,極端に偏った養育行動をとる者はまれであったため,養育環境に関するスクリーニングの社会的要請はあまりなかったと推察される。しかし,今日では,同胞数の少ない核家族の中で育てられたものが親になり,育児に従事するようになっており,どのような家庭刺激が子供の発達にとって好ましいか否かという知識や技術に乏しい者も出現してきている。したがって,乳幼児の発達の遅れや歪みを定期的健診によりスクリーニングすると同時に,家庭養育環境の面でも,リスクの高い者をスクリーニングし,調整の必要な者に支援を行うことは,今後重要なことと考えられる。
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