社会の窓
SEX過剰
野口 肇
pp.64
発行日 1967年3月10日
Published Date 1967/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203889
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テレビや映画をみます。週刊誌をよみます。どれもショッキングな見出しや映像がいっぱいです。一億総白痴ではない,一億総色きちがいの感があります。ロコツなものです。
戦前の旧修身時代,SEXについての発言はたとえ科学的なものまでタブーでした。有名なヴァンデ・ヴエルデの「完全な結婚」でさえも邦訳を禁止されていました。だがいまはどうか。日本が戦争に敗けてガラリと「民主主義」「文化国家」になったとき,さいしょにおどりでたのがこのSEXでした。当時ある「進歩的な」評論家は,この現象をこう解釈した--「久しく微賤な地位におしこまれていた性が,その理性的実力に物をいわせて復讐をはじめる時代」がきたのだ,と。そして異常の度合はいよいよはげしくなり,人間不在・愛情不在の下半身だけの性戯術がはんらんしていったのです。この集中的なあらわれが謝国権「性生活の知恵」で,近年ではセックス・ドクターという職業が大当りです。インテリア・デザイナー,ニュース・キャスターなどと同様,現代職業の花形ですが,なんのことはない,神武いらい,いや人類発生いらい男女それぞれがひっそり話しかわしていたワイ談を,神聖な科学の名のもと,白日にあてただけです。
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