連載 保健と社会・7
地域社会における人間関係論
奥田 道大
1
1東洋大学・社会学
pp.68-73
発行日 1966年10月10日
Published Date 1966/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203769
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■米国における血縁的地縁的結合関係の再評価
米国では,さいきん,大都市生活環境における血縁的・地縁的結合関係なり意義の再発見とか再評価ということが,問題視されてきています。再発見とか再評価という表現のなかには,大都市生活環境では血縁的・地縁的結合関係が弛緩・解体し,そのもつ社会的意義が喪失するという一般的法則に対するアンチテーゼの意味がこめられています。たとえば,サバービアと称される大都市郊外の中層階級住宅地域(本誌22巻5号「都市化と健康・生活水準の地域差」参照)では,緊密な地縁的結合関係づえられるということが,入居に当っての住民の大きな動機づけをなしているといわれます。「一杯のコーヒー――それはパーク・フォレスト(注:シカゴ市郊外のサバービア)のシンボルです。パーク・フォレストでは,コーヒー・ポットが1日中湯気を立てています。この友情のシンボルは,お隣り同士が互いの交わりをどんなに楽しんでいるかを物語るものです」の一節にも示唆されるように,サバービアでは近隣単位をとおした住民の各種集団活動(たとえば,社交クラブ,ロータリィ・クラブ,音楽・美術鑑賞サークル,読書サークル,ブリッヂ・クラブ,スポーツ同好会のように相互の親密を企るもの,少年非行の防止,地域生活環境の改善,保健福祉の向上,さらには教会を中心とした救貧,慈善活動のように地域奉仕に貢献するもの等)が,自主的かつ積極的にいとなまれています。
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