連載 保健と社会・6
医療体系における人間関係論
奥田 道大
1
1東洋大学・社会学
pp.69-73
発行日 1966年9月10日
Published Date 1966/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203745
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産業における人間関係論
産業における人間関係の科学といわれる産業社会学の論成果が,医療の領域にもとりいれられ,問題の解明に資するようになったのは比較的あたらしい時期にぞくしますが,いわゆる人間関係論の先駆をなすものに,有名なホーソン実験があります。ホーソン実験とは,1927年,米国有数の電気器具メーカー,ウエスタン・エレクトリック社のホーソン工場で実施した一連の社会的実験を意味していますが,そこでは,ハーバート大学のメヨー,レスリスバーガーらの指導グループによって,つぎの諸事実が発見されました。すなわち,従来,労働生理学が照明,温度,湿度のような物理的作業条件,産業心理学が個人的適性,能力を生産能率と直接関連づけて研究をつづけてきました。なるほど,照明のよしあし,適性のありなし,とくに賃金の条件が従業員の志気,生産能率に直接,間接に影響していることが判明していましたが,ホーソン工場では研究後,実験中の諸条件を元の状態にもどしても,従業員の志気,生産能率はかならずしも低下しませんでした。このおもいがけない事実の発見は,いわゆる人間関係論への志向の,ひとつのきっかけをなしました。
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